2021.03.19

一歩目は経済合理性に抗うことなく、ロスになる前にレスキューしよう

食品ロスの問題に関心をお持ちになったきっかけは何ですか?本格的に取り組まれるようになった経緯を教えてください。

食品ロスに対するぼんやりとした課題意識は大学生の頃からありました。和食店で働いていたのですが、食べ残しなどを捨てる仕事も経験して、毎日こんなに食べ物を捨てるのはおかしいぞと感じていました。

そのような思いから、食品ロス削減の啓蒙を目的としたイベント等の活動を続けるうち、誰もが日常的にロス削減に取り組める仕組みづくりが必要だと考えるようになり、フードシェアリングサービス「TABETE」を立ち上げました。

会社を立ち上げてからは、規格外野菜として捨てられてしまう食品や流通の過程でロスになる食べ物の存在も知り、ますます「なんとかしなければ」と思うようになりました。

食品ロス削減に対するご自身の活動の中で、最も印象的なエピソードを教えてください。

TABETEのリリース以来、特に最近は食品ロスの問題が顕在化してきていると感じます。食品ロスは「必要悪であり仕方がないもの」と認識されてきましたが、ここ数年で「なんとかしなければならない課題」であると見直されてきていると思います。

一方、飲食店や販売店さんは以下のような悩みを抱えていることもわかりました。
・値下げ等、販売方法の変更によって商品のブランド価値が下がってしまう懸念
・品切れを防ぐことを考えると、需要予測ができた結果、その予測結果をもとに多めに作るようになる…という矛盾
・そもそも廃棄を出しているという事実をオープンにすることへの恐れ

売れ残りそうなものをいかにして減らすかという点、売れ残らないようにどうやって需要予測するかという点で、まだまだ課題が多いと感じています。また、流通段階では1/3ルールや、先入れ先出しなどの業界の慣習をいかに緩和していけるかが、大きな論点になります。

食品ロス削減に関して、ご自身が感じている今の課題についてお話しください。

食品の「加工・製造」「流通」における課題として、3Rのうち“リデュース”の取組みにあたる「需要予測」に関してはもっと精緻にしていく余地があると考えています。そのうえで、どうしても余ってしまったものを食べてくれる人に繋ぐ“リユース”の仕組みも必要です。リサイクルや廃棄の工程にいたる前に何ができるか? 食品メーカーさんを始めとするプレイヤーの皆さんは頭を悩ませていると認識しています。

また、飲食店や販売店としては、お客様が「食べたい」「買いたい」と思った瞬間を逃したくないので、多めに仕込んだり陳列したりするのが定石です。商品の種類・量ともに余裕を持って用意するのは商売をするうえで自然なことともいえるでしょう。どの飲食事業者も、「消費者の期待に応えながら売上を確保しようとすると、売れ残りによってロスの総量が増えてしまう」というジレンマを抱えていると思います。

今後、ご自身がより力を入れて取り組んでいきたいと考えていることは何ですか?

TABETEに加え、直送タイプの「TABETE レスキュー掲示板」や商業施設内のロス削減に特化した「TABETE レスキューデリ」を展開中です。上記の懸念点を少しでも薄めつつ、ロス削減ができる取り組みを進めています。「ただの安売り・値引き購入ではなく、ロス削減をしている」という意識でそれらのサービスを利用してもらいたいと思っています。

食品ロス削減への取り組みの中で、つながれるといいな、またはつながってよかったと思われる方

各地方自治体様、鉄道会社様、不動産デベロッパー様

食品ロス削減プロジェクトに対して期待されることについて、メッセージをお願いいたします。

食品ロスは地球全体における生産者・消費者の区切りがない、途方も無く大きな問題です。食品ロスをいきなりゼロにするのではなく、まずはできることから少しずつ減らしていく、それぞれの一歩が私達の食の未来を作ります。誰が悪いわけでもなく、構造的な問題ですので、ロスを出すことは悪いことではまったくない。これから時間をかけて、一緒に解決の道を探っていければと思います。