2021.03.31

食べ物は命。命を無駄にしない世の中に。Food is life. Cherish life.

食品ロスの問題に関心をお持ちになったきっかけは何ですか?本格的に取り組まれるようになった経緯を教えてください。

2008年に当時勤めていた食品メーカーの米国本社から「日本でもフードバンクをやらないか」と言われ、社長と広報室長(自分)がセカンドハーベスト・ジャパン(2HJ)に会い、寄付を始めたのがきっかけです。その後、自分の誕生日に起きた東日本大震災で食料支援をし、「同じ食品なのにメーカーが違うから(平等じゃないから)配らない」「避難所の人数に少し足りないから配らない」といった理由で、貴重な食べ物が無駄になるのを見て衝撃を受け、その年に退職して独立しました。2HJに「会社辞めたならうちの広報をやって」と言われ、3年間はフードバンクの広報に。その後完全に独立して食品ロス問題の取材や啓発をするようになりました。

食品ロス削減に対するご自身の活動の中で、最も印象的なエピソードを教えてください。

国会議員の竹谷とし子さんより2016年にお声がけいただき、都内10箇所ぐらいを一緒に講演巡業してまわり、その結果「法律をつくりましょう」となりました。翌年2017年2月、議員会館に呼ばれ、参議院議員・衆議院議員、環境省・農林水産省・厚生労働省・経済産業省・消費者庁など関連省庁の方たちに、法案として具体的にどういうことを盛り込めばいいか、提言。それをもとに、竹谷さんたちが議員立法として2019年5月24日に成立しました。その日の朝、竹谷さんから「今日決まると思う。決まるのは一瞬だが、臨場感がある」と言われ、急遽、国会議事堂に行きました。第一号議案。本当に一瞬で、反対ゼロという電光掲示板を見て、可決されました。そのあと、竹谷さんと「ようやくできましたね」と記念写真を撮影。人生の中で、自分の専門分野で法律ができること、それに自分が関わることができるというチャンスはほとんどないと思うが、それができてよかったです。法案にするまでの、各派閥の合意形成がとても難しく、難航したと竹谷さんに伺いました。

食品ロス削減に関して、ご自身が感じている今の課題についてお話しください。

「食品ロスを減らすと経済が収縮する」と、ロスを減らすことに異議をとなえられ、理解が図れていないこと。

欠品を禁ずるからこそ、コンビニでは、公正取引委員会が「改善」を指示するほど大量の食品を廃棄し続けている状況になっていますが、「多く作りすぎないと(=欠品を防がないと)商売をし続けられない」という現場の苦悩もご理解いただきたいです。小売・メーカー・卸、どのステークホルダーが欠けてもフードサプライチェーンは成り立ちません。

今後、ご自身がより力を入れて取り組んでいきたいと考えていることは何ですか?

商慣習の緩和です。3分の1ルール、欠品ペナルティ、日付後退品、コンビニ会計など。食品業界に身を置いたことのある方、特にヒエラルキーの下にいた方は、このルールに逆らうと取引停止になってしまうという厳しさと困難を、身を持って体感しています。とはいえ、これは消費者の意識や購買行動・消費行動に大きく関わっており、どこか一つのステークホルダーが変われば解決するものではなく、小売・消費者・メーカーなどがすべてループで繋がっている問題です。

食品ロス削減プロジェクトに対して期待されることについて、メッセージをお願いいたします。

地球の形(球形)をした食品ロス問題は、どの面から切り取っても自分ごとです。一家庭平均61,000円の食料を捨てている、その6万円を捨て続けるのか、それとも旅行や読書に活用するのか。スーパーで棚の奥から牛乳をとったら手前が残り、税金も使って捨てられる。自分の納めた税金が、水分80%以上ある食品ごみを燃やすのに使われ続けるのか、それとも福祉や教育にまわるようにするのか。気候変動で異常気象が発生し、自然災害が起こるのを見過ごすのか。将来、自分たちの食べる食料は本当に足りるのか。熟年世代にとっては、子どもや孫たちの受験問題に食品ロスが取り上げられており、無関心ではいられないはずです。食品ロスは、深刻な問題であると同時に、とても奥深く、実生活に結びついており、興味のつきない課題です。地球上の11人に1人が飢餓であることも忘れずに。食べられるものはすべて食べ尽くしていきたいです。